僕はこれを情熱と呼ぶ

東京から高知、東南アジアを旅して妻と娘を愛するデジタルマーケターの人生です

③東京から高知、東南アジアに至るまでの話〜ズブの素人がなぜか高知の養鶏場で直面した謎と現実〜

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2015年、6月。僕は社命により、高知県のとある養鶏場にいた。

 

どこから話せばいいのか、、、。

 

始まりは、社長の一言だったような気がする。

「養鶏事業に人が要る。ニラの現場から養鶏の現場へ行ってほしい。」

「養鶏?卵、ですか・・・?」

卵、、、鶏、、、困ったのは、やはり全く馴染みがない、ということだった。

とにかくあらゆる経緯を経て、僕は養鶏場の管理をしていた。いや、管理をしていたと言えるのかすら怪しいが、とにかく、意味がわからないままに卵の生産販売をし始めた。

よく思い出すのは、過ごした時間が長かった、この世の果てのような原生林がそのまま残る河川敷だ。そこには僕の思考を邪魔するものは何もない。原生林から天然の石灰が、ただ河に沁み流れて緑色に染まるだけ。フェリスと呼ばれる彼女が、気づくと静かに隣にいた。

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僕「まさか、こんなことになるなんて。僕はどうしたら良かったのだろうか。」

 

フェリス「・・・」

 

僕「フェリスは、いつも何も言わずに気づいたら隣で佇んでるな。もしお前が女だったら惚れていたかもしれないよ。人間の業が渦巻くこの養鶏場で、お前は忠義を示してきたのね。すごいやつだよ。」

 

フェリス「・・・フンっ(でしょ?)」

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ズブの素人が高知で養鶏デビュー!って流石にわけがわからないよ!

 

こんにちは。なりです。

なんと、前回の記事ではズブの素人の都会っ子が高知でニラを育て始める話になりました。

www.narimasa-kasuya.com

 

農業の面白さを知る前に、自分の姿勢の甘さを思い知る毎日!(笑)

しかし、自分で決めたゴールがあるのだ、と、

フガフガ言いながら日々を乗り越えていたのでした。が!

 

社長「粕谷くん、養鶏場に行ってもらう。詳細は、前任者から引き継いで!」

 

みなさん!もう一度確認しておきましょう!そうです!

僕はズブズブのどシロウトですよ!!(泣)

ちなみに、前任者の経験も、僕と大差ありませんでした。あるとすれば、小屋の床作りをしていたかいないかぐらいでしょう。

しかし、熱病に侵されていた当時の僕には、そんなこと関係ないのでした。

幸い、養鶏技術を教えてくれる別会社の農家さんが現地に居る(技術提供料金支払済み!!)ということで、なんとかなるだろうと思っていました。甘い、甘すぎる。

僕は、そこで、養鶏業界の奇妙な謎と向き合うことになるのでした。

 

人を集めるために養鶏をやる理由とは?

 ちょっと真面目なお話です。まず、「人が育つ地域の仕組みを作る」という目標達成のために、僕たちは循環型農業という手法を取っていました。

理由は、儲けるためです。

①未利用資源を用いることで、事業コストを下げる

②その地域にしかない資源を使うことで、唯一性を高めて差別化を図る

これに関しては、別の記事で詳しく書いていきます。

みなさまお気づきだと思いますが、これら2つを実現していくのは、何も高知県だけで可能、というわけではないです。

原理原則さえ修めてしまえば、他の地域でも応用可能なのです。つまり、他の地域で応用させるためのコンサル業が、若者たちの次のステップになるわけですね。

肥料製造→自社肥料による農業→生産した農作物による飼料開発と製造→畜産物の生産→畜産物の資源を肥料として再生産

このサイクルを理解して実践することは、他の地域では非常にニーズがあります。なぜなら、儲かるためです。

例えば、畜産では飼料コストが全体経費の50%以上を占めていますね。ということは、この飼料コストを下げることができれば、インパクトは非常にでかいわけです。

輸入された完全配合飼料を使っていては、現地が離れすぎているので、そんなことは不可能。それどころか、石油価格の世界的高騰によっては、一瞬で破綻するでしょう。

 

何より、農業よりも畜産が好きという若者は確実に存在するのです。若者の選択肢の幅を持たせるために、複合的な農業展開はとても重要です。

一つ、面白かった例をご紹介しましょう。

うちにインターンにきた女子高生がいました。

「生き物が大好きで、爬虫類を飼っていて、そのペットの餌も自分で繁殖させることで維持費を下げています!」

衝撃です(笑)

その女子高生は、うちの養鶏事業でインターンをしたいと言ってくれました。さらには就職も考えていると。うちに来る前は、獣医をしたいとも言っていました。

考えてみてください、畜産の現場作業とその管理もできる獣医って、人材としては最強です。予防もできるし、何かトラブルが起きても迅速に対処できます。

結局、親から反対があって夢は実現しませんでしたけどね。儲かるかわからない、不安定、不衛生。田舎の大人たちが「一次産業なんて」と漠然と否定している限り、若者が集まるのは不可能なのです。

僕たちは、そんな一次産業を肯定するために、循環型農業、そして畜産をやるのです。

アカン!話がそれました。

 

過去の実績や曖昧な言葉が農業をダメにすることもある

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僕が初めて経験した養鶏は、「放し飼い有精卵」でした。

 

僕「どうして放し飼いなんですか?」

 

(指導してくれた提携先の)養鶏農家「放し飼いにすると、卵の弾力が上がって、つまめるほどになるんだよ!」

 

僕「へー!すごい!なんでそうなるんですか!?」

 

提携先の養鶏農家「放し飼いにすると、ストレスがなくて健康だからさ!卵黄膜が強くなるんだよ、云々・・・」

 

結論から言いましょう。放し飼いじゃなくても、ケージ飼いでも卵はつまめます。

嘘だと思うなら、ご自宅に証拠の卵送りますのでご連絡を。

ここが、素人と経験者の出会い頭でもっとも気をつけなければいけないところ。

もっともらしい言葉を鵜呑みにしてしまうと、間違った管理になり、さらに本質がわからないのでそれ以上の発展はありません。当たり前ですよね。しかし、それがまかり通るのが養鶏業界の不思議なところ・・・。

もっともらしい言葉で楽天1位になってしまうと、それは変な事実になってしまいます。

もちろん、卵は本当に美味しいと思うものでしたが、一番大事なのはなぜそうなるのか?を突き止めることです。

しかし、当然ながら当時の僕にはそれがわかっておらず、今も本当は謎に思う部分がたくさんあります。だいたい、卵がつまめるから何だと言うのだ、意味があるのか?

 

さらに衝撃だったのは、飼料の配合の決め方でした。

そこでは、自分たちで原材料を集めて、機械で飼料を配合する養鶏場でした。もちろん、飼料の配合割合によって卵の味、色、風味などは変化します。

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僕「すごい!どうやって飼料の配合割合を決めたんですか?途方もない実験の繰り返しですよねー!」

 

養鶏農家「本当に大変だったよ!たくさんのパターンを試したけど、最終的にはフェリス(飼い犬)に決めてもらったかな。」

 

僕「は・・え?フェリス(飼い犬)に?」

 

養鶏農家「幾つかのパターンの卵をフェリスの前に並べて、どれを食べるかを見てみたんだ。犬は嗅覚が鋭いからね。人間の味覚よりもいいと思ったんだよ。」

 

僕「(クラッ・・・)え・・・?(何言ってんだこの人?)」

 

この時、僕は、ようやくうちの会社がやっていることの価値を本当に理解しました。

卵を分析機関に依頼してアミノ酸分析をしてもらうこと。

その時に使った飼料の栄養分析も行うこと。

原材料ごとのアミノ酸分析も出して、計算と記録を行うこと。

それらを繰り返し行うこと・・・。

 

社長は今も言い続けます。

「ネットで調べたから、誰かが言ったから、じゃなくて、自分で参考文献を遡って調べる、実践して検証するプロセスがないなら仕事じゃないき」

(つい最近も言わせてしまった!本っ当ごめんなさい!!泣)

 

もちろん、その別会社の養鶏農家から教わったことで、今でも実用価値のあることもありました。しかし、それは自分たちでやってみて効果がある、と判断したものでなければなりません。

過去に、楽天で1位になった、菅元首相が表敬訪問に来た、いろんなメディアが取材にきた、そんなことは今とは全く関係がないのです。

今、現場ではなぜ何が起きていて、どんなことをしていて、どんな発見があったのか?

 

僕も、生産者としてこの姿勢を忘れてしまうことがありました。

特に変化はない、過去にこうだったから、こうしたらいいと思う。そんなのは現場では価値がなかったのです。それに気づくまで、だいぶかかりました。

そして、僕は意を決して言うしかありませんでした。今思えば、大変に失礼な言葉です。しかし、僕は必死でした。自分と会社のゴールのために。そして、もっと正確な技術を身につけるために。

 

「(40代の養鶏農家に向かって)お願いですから、もっと現場に来て、現場を触れて観てください。そうすることでしか、現場から情報と信用を得ることはできないと思います。」

 

僕は、鶏に狂っていたのです。

 

素人が畜産の技術を覚える面白さ

 

えー、なんだか生意気で重い内容になってしまいましたが、素人ならではの面白さもありました!(笑)

それは、ちゃんと学んで実践すれば素人でも結果が出るという、まあ一次産業に通じる面白さです!

例えば、僕はまずアミノ酸計算を導入するという改善に取り掛かりました。会社のノウハウの中で、各種アミノ酸のバランスが食味に影響することは明白だったからです。

飼料の資料を読み漁り、

日本飼養標準・家禽〈2011年版〉

日本飼養標準・家禽〈2011年版〉

 

 先人たちの知恵を借り、

養鶏飼料製造の実際 (1978年)

養鶏飼料製造の実際 (1978年)

 

 時には専門家に電話で意見を聞き、

各種原材料のアミノ酸を理解すると、味の違いが体感と理論でわかるようになってきました。

一次産業は、原因と結果が全て目の前の現場にあります。

さらに、畜産は、PDCAのサイクルがメチャクチャ早いのです!!

農作物は、結果が出るのに何ヶ月かかってしまう。畜産は、何かを変えたら、1週間後には結果が出ているでしょう。これが、素人の僕の性格を刺激したのです。

 

実際、作業が辛くて、養鶏場に寝泊まりするのが辛くて、何度も辞めようと思いましたが(笑)

会社が、こうやって探求する時間とお金を僕という人間に投資してくれたのは、今ではさらに大きな財産になっています。

今でも、卵の変化を感じたら現場で生産してくれている元同僚に電話します(笑)

 

僕「卵食べたけど、餌変えたでしょ?」

 

元同僚「やっぱ?穀類変えてみたんだよね」

 

僕「うーん、たんぱく質も変えてみたら?」

 

元同僚「そう思って、変えてみた」(さすが!惚れるぜ!!)

 

これ、養鶏歴1年ちょいの26歳同士の会話ですよ??(笑)

どや!!

いやいや、ドヤじゃねえよ。

この会話を生み出したのは、他ならぬ循環型農業と会社の本質的な育成手法のおかげ。

何より、PDCAサイクルが早い養鶏に目をつけたのはまさに先見の明と言わざるを得ません。

 

今になって、その時の体験の価値がさらに価値を生むのです。

 

業務の効率化はそのあとの最重要課題になってきますが、それは僕たちじゃなくて有能な人材やプログラムに任せればできること。

でも、いつだって現場で苦悩した人間が持ち得る学びは宝物です。

 

うーむ。重い、重いよこの記事!!

さて、次回は「養鶏場で起こった面白珍事件集」をまとめていきましょう!

もちろん、楽しかった出来事だって語りつくせぬ!

高知の山奥で、UPDOWNがハゲ激しい日々はまだまだ続きます。

 

おまけ 養鶏場で生まれた子猫たち

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