キャリアをすぐに答えられないので半生を綴ります。マーケティングの本当の喜びを知るまで。
「色々とお仕事をされてきたんですね」
僕が今までの仕事内容を話すとき、情報量が多いためか「よくわからない」と思われていたように思う。
また、僕もそのように話すことで面倒から逃げていた自分を誤魔化していた節もある。
手広くやっていてよくわからないぐらいが面白いだろう。
いっぱいやっているほうが、なんだかスゴいように見えるかもしれない。
なにより、自分の考えまで表現するのが面倒なんだ。ああ、ベッドに帰りたい。
とても愛を込めた態度で、こう言ってくれた人もいました。
「君はすべてが中途半端や」
そのときの周りの人たちはなぜか僕をかばってくれたりしてちょっと嬉しく思いましたが、
でも、それ以上にそんな言葉をかけてくれて、向き合ってくれて本当に有り難いな、と僕は感じていました。
「自分の考えや取り組んでいることをシンプルに表現したい」
あまり言わないでいるけど、実は死ぬまで一貫して持っている価値観。
そして、最近得たマーケティングスキルがもたらしてくれた喜びと面白さについて。
これが僕の仕事であり、人生であり、喜びです、と言いたくて綴ります。
人には素晴らしい価値があって、人に貢献できる可能性がある
これはずっと無くならないだろうな、と思う価値観があります。
最近は、それがすべての仕事に出てしまっているようで、つまり僕の仕事内容を話すには少しだけ半生を綴ります。
僕は福祉施設の出身です。
小学3年生ぐらいまで、母子家庭支援施設という全寮制の施設で暮らしていました。
家賃や光熱費など、国からの補助がありました。
今思うと、保育園や学校では狭い思いをしていたのでしょう。
「自分は、友達の親の税金に助けられて生活できているんだ」と思っていましたし、事実そう言われた事もありました。
しかし何も言い返す事もなく、その後は勉強やスポーツ、友人関係で成功体験を得る事もなく、生活が楽になるからと言いながら母は再婚して葛飾区で暮らし始めました。
自分の人生を深刻に考えることもなく、運良く19歳になります。
そして、大学1年生のときに先輩に誘われてマレーシア地方部の児童養護施設に行ったとき、僕は"今までの人生で失ってきたもの"に直面しました。
マレーシア地方部の児童養護施設は「子どもの家」と呼ばれ、循環型農業で自立的な経営を目指している福祉施設でした。
自立にとどまらず、さらに周囲に素晴らしい価値をもたらす地域資源である福祉となり、
「Sustainable Welfare(持続可能な福祉)」を実現するというコンセプトがありました。
図は2011年時点のもの
このコンセプトは、僕には非常に強烈でした。
福祉施設にいる人間は「援助される対象ではなく、価値がある人間である」と言っているのです。
価値がない人間なんていなかったのです。その事に気づくまで、僕は今まで多くの事を諦め、人を諦め、自分を諦めていました。
愛情も親しみも充実感もない、とてもスレた生意気なガキでした。
今でも思い出すと黒歴史というか、「んなあぁーっ」となって奇妙なファルセットを出してしまいます…。
学生時代の僕は、「子どもの家」の支援にのめり込みました。
そして、学校から帰った子どもたちがコンポストシステムを運営したり、農作物を生産している姿を見て、
「人間はなんて素晴らしいんだ。誰にでも、誰かに貢献できる可能性があるんだ」と本当に掴めました。
今これを読んでくれているあなたにも、日常の自分の行為が、誰かに喜びや充実感、自信をもたらした体験が必ずあるはずです。
それ以降、人はみな価値があり、人が人のためにする仕事はすべてが素晴らしい!と信じてそれを実現する事が、僕の仕事のスタンスとなります。
今の仕事
これまでは、主に3つの仕事がメインでした。
・高知県で循環型農業モデルの立ち上げ、生産販売
・地のものバル MUJOプロジェクトへの参画
・デジタルマーケティングのコンサルティング
ちなみに、これらの仕事にたどり着いたのはたまたまご縁があっただけですww
これからもどんどん新しい仕事にチャレンジしていくつもりです。
知識を覚える時間さえクリアすれば、どんな仕事でも成果を上げる事ができると信じています。
というか、価値ある人間が生み出す仕事はどれも素晴らしい可能性にあふれているので、どの仕事も面白そうに見えてしまいますw
マーケターになって気づいてしまった深刻な矛盾
しかし、ここ1年半ぐらいマーケターとして働いている中で、僕はある深刻な矛盾を抱えていることに気づいてしまいました。
そして、つい最近まで、自分はそのような矛盾を抱えていないと思い込んでいたのです。
さらにその矛盾は、人間であれば誰もが逃れられず、強烈なプレゼンスを放っていますが、自力で気づく事は非常に困難です。
それは思えば、今までの仕事や、人間関係において、明確に現れていました。
それは例えば、高知県で養鶏事業の立ち上げ時に卵がなかなか売れずに悩んでいたとき。
あるEC事業会社が「出品しませんか?」と電話してきました。
僕はすぐに聞きました。
「でも固定でお金かかるんでしょ?」
業者は答えました。
「限りなく0円にするよう稟議通しました!初月無料です!」
僕は「すごい!お願いします!」と答え、卵は全く売れませんでした。
それは例えば、人間関係において"自分がいかにスゴそうに見えるか"を気にしているとき。
自分への批判や忠告などは聞いているようで聞いていません。
その後ふと連絡がくることはありませんし、自分もふと連絡できる人は減っていきました。
それは例えば、マーケティング現場においてクライアントに「デジタルマーケのテクニック」を説いているとき。
心の中は、「どうせ相手はわからない」「無茶を言うな」「戦略が欠けている相手が悪いんだ」「広告予算が欲しい」という自分の声でいっぱいです。
自分が抱えている矛盾とは、
「自分のための短期的な利益・結果を優先して、人間の価値を否定している」という、まったく顧客を無視している無意識でした。
利益とは、お金だけではありません。
自分は傷つきたくない。否定されたくない。負けたくない。
支配されたくない。支配していたい。間違いたくない。
無意識のうちに自分を守ろうとするあまり、「人はみな価値がある」という価値観を忘れてしまうのです。
そして、自分の商品にはまるで価値がないかのように、EC業者へ厳しいコストカットを要求し、安売りし、誰にも届かなかったのでした。
*当時の同僚と社長に謝りたい・・・
マーケティングを本当の意味でイチから勉強し直した
矛盾に気づいたのは、つい最近の長女の誕生がきっかけでした。
僕は矛盾に気付いても、またすぐにこの事も忘れてしまう!
どうすれば、元々のスタンスを忘れずにいられるだろうか!?
僕は、そこで初めてマーケティングを学ぶ本当の意味を知りました。
「いつでも、相手の世界に立って価値を届けるプロセスを身につける」
僕にマーケティングを教えてくれている福田社長がいつも、常に言い続けている事。
「マーケティング戦略では、やらない事を決めろ」
僕は、自分の小さな利益のために小さな仕事ばかりをやる決断をしていました。
モノが売れるのは結果であって、本来の目的ではありません。
本来の目的は、もともと人間に存在している価値を発見し、表現することです。
その意味をふまえて今までのマーケティング書を読むと、まるで今までとは情報の受け取りかたが違います。
最近の「潜在価値マーケティング」の概念には、もはや現代アートを見たような感動すら覚えました。
要約すると「人間は主観しかない。顧客に重要な情報を伝えているつもりが全然伝わっていないケースがあるので、思い込みを克服せよ」
と言っています。
身に染み入りまくりです!!
当たり前のことを当たり前に伝えるということに、人間がどれだけの研究を費やしてきたのかがよくわかります。
今は、本当にマーケティングを学ぶのが楽しいです。
(デジタルマーケター育成塾のクラスを運営する前に気づけて良かった…ww)
僕だけではなく、あなたも「自分のための小さな利益を無意識に儲けている」ことはないでしょうか。
マーケティングは「それは相手への貢献ではないよ〜」という自分の矛盾に気づくための考え方やスキルをもたらしてくれます。
もう、全員デジタルマーケター育成塾にきてほしいぐらいです。本気で。
これからの仕事
さて、マーケティングの面白さに気づいてしまってからは、僕のキャリアはさらに可能性が広がってきました。
誰かと話すたびに、色んなアイディアが飛び出してきます。
育児中ではありますが、今後チャレンジしようと考えている企画を少しだけご紹介します。
・人間プロダクション
人間の秘めたるパワーを表現するプロモーション事務所。彼らを世にプロデュースすることで、社会的認知度の向上、彼らのキャリア支援、人材が欲しい企業への紹介も可能。単なるインタビューメディアではない。人が人に熱狂する。
「料理人を料理する」「全国の難民と呼ばれる人」「声優・アイドルの人」「伝統芸能人間たち」など
・家族未来研究所
もっとも基本的な人間関係である家族の在り方を考える。男性の育休もいいと思うが、各家庭の育休を取得した後の家族関係の在り方を根本に据えたい。
家族未来サロン、家族未来キャンプ、家訓づくりワークショップ、企業の管理職への育児研修を企画中。
・畜産飼料の研究と実験圃場の運営
大学や企業では手が回りきらない実験を行う圃場を運営してみたい。個人的な研究テーマも検証し、論文も執筆する。
「家禽の配合飼料における籾米利用の費用対効果はアジアの農業経営にどのような影響を与えるか?」など。
さて、子どもが起きたのでミルクを作りますかね。