不良警官もいなくなったので、治安が良くなった葛飾区「立石」のPRらしき。
実家がある葛飾区に住民票を戻したということで、
なんとなしに葛飾区のPRでもしてみようと思う。
たんまりと税金を納められない可能性なんて十二分にあるので、税務局に少しは目をつぶってもらえないだろうか、という下心などあるはずもない。
1番新しい記憶は、ちょうど去年の9月ごろだっただろうか。
一時帰省中に立ち寄った亀有駅は、それはもうひどい様相を呈していた。
ちょうどその頃、何かの祭りでもあったのだろうか、歩いていると美男美女、そしてマッチョなエセ警官たちが
「面白い本があるんだ。全巻買ってくれ!」と矢つぎ早に訴えてくる。何でも、それは200冊にも及ぶらしい。
「200冊も同じテーマを描き続けるなんて著者は正気を失っているとしか思えない。僕は仕事続きで疲れているんだ。悪いけどそんなドグラ・マグラを読む気になんてなれないよ。」
顔を合わせるのが嫌なので、仕方なく下を向くと、なんと今度は美しいオカマ婦警までもが
「買ってくださいですわ!」と訴えてくる。
僕は、美しいオカマと、娘を持つ父親には、すこぶる弱いのだ。あれは本当に参った。
読む気がある人は、全巻買わなくても亀有駅近くのドコモショップで読むことができる。僕はそんなことは最初から知っていたのだが、とぼけたふりをして常磐線に乗り込んだ。
その時の様子が描かれている。
https://rocketnews24.com/2016/09/17/802168/
僕が10歳の頃に葛飾区に引っ越してきて、自分が葛飾区民だと自覚し始めたのは高校を卒業してからだった。中学生の時は、足立区や土手ばかり行っていて、あまり地元には詳しくなく、高校は千葉県の坂の上にある辺鄙な進学校だった。
大学に入り、バイトの金が入ってきてふと最寄駅の「京成立石」をうろついていたら、そこが僕の原風景になった。
立石は、全国から客が来るほど「もつ焼き」が有名だ。
なんでも、戦後の時から所得の低い人達のために築地から安いモツばかりを仕入れていたので、現在もその独自ルートがあるらしく、鮮度が高いモツが葛飾区の立石に集まるのだそうだ。
どんな店があるかは、自分で調べて欲しい。僕は今、「通信規制」のために身動きが取れずにいる。葛飾区でソフトバンクのWi-Fiなんて見つけるのは、もつ焼き屋よりも難しいのだ。
さて、駅近くの商店街の中にあるもつ焼き屋は、ほとんど夕方には閉まっている。かといって、昼間から気合を入れて食べに行くのは、僕はちょっと間の抜けた感じがするので好ましくない。しかも、観光客や常連で食い尽くされているので面白くない。
そうすると、僕が夜に行く店はだいたい2軒ほどに縛られてくる。
僕が行くもつ焼き屋は、商店街の公衆トイレの近くにあり、だいたいが相席だ。しっかり炭火で焼いてくれるし、タレも塩も安っぽくないのに、安い。
原則、1階しか案内されないが、常連になると2階に案内されるらしい。そこでは表に出せないレバ刺しやハツ刺しが注文できるそうだが、1階でも頼めばやってくれる。そんな曖昧さがいいのだ。
相席になる人は様々だが、会話するのはポツリポツリ程度。
50代の贅肉が削ぎ落ちたおじさんが
「今日は娘の誕生日でね」と言い、
僕はそれに「そうですか。レバタレ食べます?」と応じるくらいだ。
その後は、8人ぐらいしか入れないような手狭なバーに行く。
もしまだお腹が足りないのなら、オリジン弁当で唐揚げを買っていくといい。女主人がどうぞ、と言ってくれる。ただし、シチューぐらいは注文した方がお店への恩返しと言える。それか、もう一踏ん張り酒を頼んで飲もうという気概は持った方がいい。
バレンタインの時なんかは、土木会社の社長を名乗るコワモテのおじさんが、トナカイの鼻をつけて「アヴェ・マリア」を歌い上げてくれる。僕が大学時代の彼女にズバンッと振られた後なんかは、特に沁み入ったものだった。
僕は、時たまそのバーにいる女の子に声をかけたり、女友達を連れて行く。周りのお客さんは必ず褒めてくれるので、女性なら悪い気はしないはずだ。こうして、少し葛飾区を楽しんでもらえたらいい。
男の僕に声をかけてくれる女性は、中国語か怪しい日本語を話す人くらいだが、それでもちょっと嬉しいので「ありがとう」と言ってかわす。
ちなみに、よく葛飾区は治安が悪いと言われるが、
立石で飲み歩いているとそうは思わない。
確かに、葛飾警察署では駐禁に駄々をこねた挙句、
「俺の女なんだから殴ったっていいだろう」とのたまいながら嫁を蹴る輩がいる。
立石でそんな奴がいたら、ピンヒールを履いてそいつの鼻腔をぶっ刺し、返り血がついた服を公園の水で洗い、夜の冷や風の中濡れた服を被せて、
「あなたがしたのは、そういうことなのよ」と言うだろう。
なんというか、そんな傾向があるのだ。
そういえば、立石が好きすぎて、嫁の反対を押し切って近所に引っ越してきた上場企業の役員もいた。
「お前たちの活躍の場は、俺が絶対に作る。」
と言ってくれたが、僕は退職してしまったのでその後はわからない。熱心に勧めてくれた「サンクチュアリ」という漫画は、今でもたまに読み返す。
カンボジアの内戦から生還した日本の男二人が、じゃんけんでお互いの運命を決めて、表と裏の世界から日本の政治を変えるといった話だ。
なんというか、そんな熱をこもらせる人も葛飾区には、いるのだ。
あの人は健やかにお過ごしなのだろうか。
そして、そんな原風景に似た景色を、高知でもちらほら見られたので嬉しかった。
僕が最終的に高知が大好きなのは、おそらくそう言った理由なのだろう。
もちろん、初めての方が気に入るかはわからない。
都会の若鶏を食べ慣れている人は、最初は下町の地鶏の歯ごたえに抵抗があるかもしれない。
しかし、それは自身の調理法でどうとでもなるのだ。柔らかくするもよし、歯ごたえを増すもよし。
そのような感性は、人間の素晴らしい点の一つでもあると思う。
お越しの際は、お気軽に声をかけてみてくださいな。